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92歳の精神科医中村恒子先生と54歳の精神科医奥田弘美先生の対談形式のタイトル通りのご本です。恒子先生は昭和世代の努力と根性論なのかしらと思いきや、すごくしなやかなのれんのような生き方(レジリエンス)を、されてきていらっしゃいました。医師の仕事、育児、家事、呑兵衛のご主人の世話などで、もはや悩んでいるヒマもなかったんだろうなぁ…と、日々を丁寧に生きていかれてこられたさまに、えらいなぁと感心しました。人間関係の悩みに対する名回答が多いご本になっています。
■人様のネガティブな話題を聞いていたら、引っ張られてしまうので、どうしたらいいでしょうか?
■SNSとかで、他人と自分を比較しては落ち込んでしまいます。
■残りの人生、自分だってやりたいことはある。…けれど、環境や収入や家族とか、いろんな難関があって、どうしても一歩踏み出せない。
……などのお悩みの方へ。恒子先生のツッコミが素晴らしすぎて、あめちゃん自分で「あ…、なんだ…、自分、大ごとに考えすぎていたのか…」と、フッと心が軽くなりました。
■1つ目。恒子先生の名回答いきますよー。
『とにかくネガティブな話題には、乗らないことやな。「ふーん、そう」と興味をできるだけ示さないようにすると、「この人に話しても盛り上がらへんから、つまらん」と近づいてこなくなる。』(P84より引用)
これに対して弘美先生は「ネガティブな話題を盛り上がらせる燃料を投下しないことですね」と相づちをうたれているんです。先日の高津りえさんのご本で『気枯らし』のお話がありましたが、「かまわないこと」ですね。
■2つ目。めっちゃ面白い恒子先生の名回答です。
『自分のことをさらけ出し過ぎるのも、他人さんのこと知り過ぎるのも、ろくなことにならへんのにな。でも、今はそういうのが流行っているってことは、とにかく見たくもない他人さんのことが、簡単に目に入ってきてしまうってことなんやろうね。』(P122 より引用)
『家に帰ったら、自分が医者やってことはスッキリ忘れて、家族のことをあれこれやらんといかんかったし。夜まで他人さんと付き合っていたら神経もたへんやろ?』(P114より引用)
別にSNSに限らずですが、けっこうね、昭和の頃より現代の方があまりにも他人様に介入しすぎなんじゃないかとすら思うあめちゃんなのですが。核家族化とか孤立とか言いますが、むしろ興味本位でいらん介入しすぎ、放っておきなはれ、とセルフツッコミを自分にしてしまいます(笑)。
■3つ目。これもすごく大事です。
『やりたいことを後回しにしなかった患者は、人生の終わりも穏やかな笑顔をたたえていた。』(P148と引用)
やりたいこと、できないからやらない理由は、いっぱい挙げられるものですよ。人間の脳は言い訳を考えるときに最もクリエイティブになるとメンタリストDaiGoさんが仰っていました。
『夢を叶えるゾウ』で、収入が不安定とか、恋人や家族が反対するとか、そんな悠長なことを言ってたらあかんというお話もありました。「時間が無い!できない!」と日々言っている人というのは、
本当に自分のやりたいことを後回しにしすぎ
なのです。だから、なんにも、全く片付かないし、進まない、ということです。
■あめ的回答■
かなり、人間関係のお悩みあるあるを、わかりやすくポイントをとらえて下さっていて、「うん…それでいいんだよなぁ。ふむふむ」ってホッとしました。このご本の人間関係のお悩みとは全く別の話になるのですが、最後の方で、『寝たきり』の方の延命治療は本人には地獄だというお話が載っているんです。恒子先生・弘美先生とも自分たちは延命治療は絶対に受けたくないと仰っていて、実は本当のところ、患者さんのご家族に声を大にして力説したいお話だと思うんです。あめちゃんの母が42歳で亡くなったときもチューブつないで延命をやっていたのですが、おそらく全員がムダだとわかっていたとは思うんです。痰を吸い込むバキュームをするときに寝たきりでも「ウッ!」という感じがあって、ムダに地獄を味わったんだろうなと思います…。医師は、家族から延命の要望をされたら断れないので、心苦しいけどやらざるをえないのです。あめちゃんが、皆様に押し付けるわけにもいきませんが、寝たきりの延命治療は、やられている本人には地獄だという認識が周知されるようになってほしいなとは思いました。